梅雨は、どんよりしている空と同じように、体も心もなんだか重たくなりやすい時季です。空だけでなく、心の中までも、梅雨のジメジメや重たい状態になると、日々のトレーニングや試合にも大きな影響が生じます。
そこで、今回は梅雨に負けない心と体を支える生活についてご説明します。
■梅雨は誰もが心も体もしんどくなりやすい時季
「五月病」という言葉を聞いたことがある方は多いですが、5月だけが特別な病気がある月ではありません。梅雨の時季は「六月病」の時季とも言われていることをご存じでしょうか。たった1カ月違いでも、その違いは大きく異なります。
五月病は、働いたり学んだりする、新しい場所や人間関係にうまく適応できないことがきっかけで心が不調になります。これに対し、六月病は、新しい場所や人間関係に慣れ始めた頃に、無理をして気を張ってきたストレスが、抱えきれなくなるまで大きくなって生じる不調です。
環境変化によって生じる五月病に対し、六月病は、環境変化に対応するよう頑張りすぎて起きる不調という違いがあります。雨や曇天の日が強く影響しているので、季節性感情障害や季節性うつとも言われ、プロのアスリートの管理栄養士や、トレーナーにとって予防は重要な役割です。
この梅雨特有の、心身のあらゆる不調の主な原因は「日照時間」と「気圧」です。雨や曇りの日に、自然と日光を浴びる時間が減ると、体の中にあるセロトニンとドーパミンという物質も減ります。セロトニンはストレスに強くて心が安定する効果、ドーパミンは集中力、やる気を高める効果がある物質です。
この2種類の物質が足らなくなると、ストレスや疲労を感じやすい、やる気が出ない、よく眠れなくて寝起きがしんどい等の症状につながります。さらに、雨が降らなくても、白くない雲が空に広がる日々が続くと、気圧が低い時間帯が長いことが原因で、自律神経が乱れ、心の状態も乱れます。
睡眠の質が下がってよく眠れないうえに、意味なくイライラしたり、理由なく心が落ちつかなかったりしがちな症状を予防、改善するには入浴が大切です。蒸し暑くて疲れていると、シャワーでさっと済ませたくなるかもしれませんが、湯船に10分間つかるだけで自律神経を整えられます。
10分間は5分を2回に分けてもいいですし、それでもしんどい場合は、半身浴で20分のんびりつかってください。熱すぎるとかえって交感神経を高めてしまうので、38度から40度のぬるめの温度が重要です。
■梅雨に心も負けない食事内容
梅雨に強いメンタルを維持するために、積極的にとりたい栄養素として覚えておきたいのは、先ほどの「セロトニン」ともう一つ、ビタミンDです。ビタミンDはセロトニンを増やすために必要なだけでなく、免疫力を高めて骨を強くする効果もあるので、ジュニアアスリートには欠かせません。
セロトニンは、カツオやマグロ等の赤身のお魚や、チーズやヨーグルト等の乳製品、納豆や味噌、きな粉等の大豆製品の他に、ナッツ類や卵にも豊富です。ビタミンDは、鮭や青魚ときのこに豊富なので、うまく組み合わせた食生活を目指してみてください。
とはいうものの、梅雨の時季には急に食欲が減ってしまって、口当たりのよい冷たいうどんや素麺、ゼリー状の栄養補助食品や炭酸飲料、ほとんど噛まなくても食べられるシュークリームやプリン、アイスクリーム等で空腹を満たすケースは少なくありません。
暑いと、体温を調節することにエネルギーをたくさん使うために、食事の消化に使うエネルギーをセーブしようとするので、確かに食欲は落ちやすいと言えます。しかし、体を冷やして、さらに体のだるさを強めて栄養が不足する食生活は禁物です。
わさびや生姜、カレー粉、レモン、お酢は食欲を促進するので、積極的にお料理に活用してみてください。どれも傷み対策にもなるので、蒸し暑い時季のお弁当のおかずにもおすすめです。主食は、消化しにくいパンや麺類よりも、お米を基本にするのが理想的です。
■梅雨に避けたいのに過剰摂取されやすい飲み物
最後に、ジュニアアスリートは、摂取しないほうが望ましくても、愛飲されがちな飲み物をご紹介しておきます。それは、エナジードリンクです。エナジードリンクは、ビタミンやミネラルが補給できても、その量はごくわずかで食事代わりにはなりません。
また、子どもには、大人用のエナジードリンクを飲むと、カフェインの影響を過剰に受けやすく、異常にテンションが上がったり、なにげないことで落ち込んだりと、精神的に不安定になる危険があります。カフェイン中毒になる確率は、大人よりも高いのです。
さらに危険なのが「低血糖」です。エナジードリンクには、カフェインだけでなく、糖分もたくさん含まれており、普段のトレーニングで問題なくても、試合前のハードなトレーニングや、試合中の場合は、低血糖状態になって頭痛や吐き気、重度なら意識がもうろうとする可能性もあります。
パフォーマンスを続けられたとしても、集中しにくくなる、疲れをためやすくなる等の体への大きな負担が生じることを、ジュニアアスリート本人が知っておくことが必要です。エナジードリンクは、カフェインも含む炭酸飲料で、栄養ドリンクではありません。
エナジードリンクの場合には、ラベルの成分表示欄に注意書きとして、子どもは控えるように記載されています。眠気を解消する清涼飲料水やコーラも、カフェインを多く含むので、ジュニアアスリート本人と、その周りの大人も一緒に覚えておいてください。
いかがでしたか。今回は、梅雨の時期に心も体もしんどい状態を改善する過ごし方や、食生活についてお伝えしました。ぜひ、参考にしてみてください。